FTIRにより、反応のトレンド、プロファイルをリアルタイムで測定し、反応の速度論やメカニズム、反応経路、さらにパフォーマンスに対する反応変数の影響について、きわめて具体的な情報を得られます。ReactIR In Situ FTIRを使用する場合、ReactIRは反応の過程を通じて反応物質、試薬、中間体、生成物、副生成物が変化する様子を直接追跡します。ReactIRにより、化合物、合成経路、化学反応プロセスを研究、開発、最適化する中で重要な情報を得ることができます。


In Situ ReactIRによるFTIR
安定したスケールアップと一貫したプロセス開発のために

FTIR分析の簡略化
化学反応を理解するために、研究者は以下を検討する必要があります:
- 反応開始はいつか、反応停止はいつか
- 反応速度、反応メカニズムは明確になっているのか?
- 不安定中間体は反応にどのように影響するのか?
- 予想どおりに反応したか副生成物が生じたか、その理由は
- 反応温度、滴下(ドージング)速度、攪拌速度が変わると何が起きるか?
以下の5つのReactIR FTIRの特徴により、最適なデータ取得、迅速に解析が可能となります。専門知識の有無を問わず研究者の誰もが反応を理解できるようになります。

クラス最高のパフォーマンス
プローブから検出器、ソフトウェアに至るまで、ReactIRは中赤外線での指紋領域の使用に最適化されており、正確な分子情報をすばやく得るための高感度なシステムとなっております。

ワンクリック解析
iCIRソフトウェアはリアルタイム分析用にデザインされており、ピークピッキングのアルゴリズムと官能基の情報を組み合わせることで解析時間を大幅に短縮します。ユーザーは各自の化学物質の知識と自動データ分析ワークフローを組み合わせて、すべての実験でデータを正しく収集し解釈できます。

FTIRプローブの幅広い製品ラインナップ
プローブは以下の条件で使用可能です。 - 低温~高温 - 低圧~高圧 - 酸性、塩基性、水系、あらゆる種類の化学物質での分析が可能です。

ラボから生産現場まで対応するFTIRソリューション
ドラフトチャンバーに十分収まる小型サイズ、プラントに適合するATEX定格、あらゆる反応やプロセスをサンプリングするサンプリング技術 - ReactIR FTIRを使用して、プラントで起きる事象はラボで観察される事象であることを実証できます。

FTIRの幅広い専門ノウハウ
メトラー・トレドは反応分析に関する専門知識を30年以上にわたり蓄積しており、当社が非常に注力している事業でもあります。その専門的なノウハウを特定の目的に適したFTIRに投入しました。

オフライン分析の代わりにリアルタイムのIn Situ FTIRを選ぶ理由
従来の方法は、反応に関する情報を得るために、HPLCのようなオフライン分析のためにサンプル採取が行われています。サンプルの除去によって重要な情報が失われる化学物質や、毒性などの危険をともなう化学物質の場合、この手順は容易ではありません。さらに、研究者はサンプル採取時はその場にいる必要があり、分析結果が得られた後に反応を開始します。
これらの問題は以下のような影響も考えられます。
- サンプルが変質している可能性がある
- 中間体の消失により、誤った反応経路の仮説をたてる
- 大気中の水分、毒性、爆発性、高圧環境に対する不十分な理解
- 反応が変化し、誤ったデータ取得に起因する開発時間の増加
- 生成物、プロセスの品質に影響を与える因子を見落とす可能性がある

ReactIRはさまざまな条件に対応
ReactIR 702Lは、リアルタイムIn SituFTIRと操作性を統合したシステムです。ReactIRは、あらゆる化学者と実験を対象にしています。
ReactIRは終夜運転にも対応
ReactIR 702Lは固相冷却技術を使用してクラス最高のパフォーマンスを発揮し、液体窒素を必要としません。装置セットアップ時の安全性の確保、液体窒素の継ぎ足しを無くすことで、長期間にわたり化学反応のモニターが可能です。
ReactIRの準備はいつでも稼働できます!
小型で段積みが可能な本体は様々な場所に設置でき、ドラフト内のスペースを有効に活用できます。「常時オン」の検出器は設定時間を短縮し、信頼性の高いデータ収集を即座に開始できます。
ReactIRはあらゆる反応に対応
プローブ(バッチ反応)、フローセル(フロー反応)により、気液相における反応もモニター可能となります。プローブ、フローセルを構成する材質は、幅広い温度/圧力、酸性/腐食性の環境でのデータ取得を可能にしています。
FTIRのアプリケーション
ReactIRはさまざまな化学反応で使用可能です。適用可能な条件は、分子が赤外活性であること、化学反応が溶液内またはオフガスで進行すること、目的物の濃度が系中に約0.1wt%以上含まれることになります。
FTIRの主な適用例を以下に示します。

FTIR vs ラマン分光法
比較
FTIRとラマン分光法は、多くの場合、互換性があり、いずれも補完的な情報を得ることもできますが、実用面での違いもあり、それによりどちらが適するかが異なります。大半の分子対称性はFTIRとラマン活性の両方に対応します。反転中心を含む分子では、赤外バンドとラマンバンドは相互に排他的になります(結合はラマン活性または赤外活性のいずれかで両方にはなりません)。1つの基本ルールとして、双極子の変化が大きい官能基はIRが適しており、一方で、双極子の変化が小さい、あるいは対称性が高く双極子の変化が実質的にない官能基はラマン分光法が適しております。
以下の場合、FTIRが適しています
- 反応物質、試薬、溶媒、反応種が蛍光を有する反応
- 双極子の変化が大きい結合に着目する場合(C=O、O-H、N=Oなど)
- 低濃度の試薬と反応物質が反応する場合
- 溶媒のラマンスペクトルが強く、主要種のスペクトルを消してしまう反応
- 中間体が赤外活性である反応
以下の場合、ラマン分光法が適しています
- 脂肪族と芳香環の中の炭素結合の調査が主な目的の場合
- FTIRでの確認が難しい結合(O-O、S-H、C=S、N=N、C=Cなど)
- 溶液中の粒子の検査が重要な場合(多形など)
- 低周波数モードが重要な場合(金属-酸素など)
- 水性媒体での反応を調査する場合
- 反応ウィンドウを通した観察が安全で容易な反応の場合(高圧触媒反応、重合など)
- 低周波数格子モードの調査が目的の場合
- 二相系、コロイド反応の反応開始、終点、安定性を調査する場合

HPLCで見えないものとは
このホワイトペーパーでは、最近の学術誌の記事による5つの研究事例を取り上げており、従来のオフライン手法では非常に困難で時間がかかる反応をin situFTIRで達成した例を紹介しています。
- 反応メカニズムの解明 - カップリング試薬での不安定な中間体の検出
- サンプリングが難しい化学物質のモニタリング - -70°Cでのリチオ化反応
- 反応追跡による収率と純度の向上 - 最適な反応終点の決定
- 保持時間の解消による品質とスループットの向上 - エピマー化につながる分解
- 速度論の迅速な判定 - 1回の実験による一次反応速度論
FTIRの学術記事
in situ FTIRによる連続測定は、反応挙動の追跡、反応速度論解析のために用いられます。関連文書のリストでは、in situFTIRのアプリケーションに注目しております。中赤外 In Situ FTIRはアカデミアと工業分野の研究者の方々にご利用いただいており、包括的な情報と有用な実験データを提供し、研究の発展に貢献しています。
FTIRの論文リスト
- Beutner, G., Young, I., Davies, M., Hickey, M., Park, H., Stevens, J., Ye, Q., “TCFH−NMI: Direct Access to N‑Acyl Imidazoliums for Challenging Amide Bond Formations”, Org. Lett. (2018) 20, 4218−4222.
- Sheikh,N., Leonori,D., Barker,G., Firth,J., Campos,K., Meijer, A., O’Brien,P., Coldham,I., “An Experimental and in Situ IR Spectroscopic Study of the Lithiation−Substitution of N-Boc-2-phenylpyrrolidine and -piperidine: Controlling the Formation of Quaternary Stereocenters” J. Am. Chem.Soc.( 2012) 134, 5300−5308.
- Hamilton, P., Sanganee, M., Graham, J., Hartwig, T., Ironmonger, A., Priestley, C., Senior, L., Thompson, D., Webb, M., “Using PAT To Understand, Control, and Rapidly Scale Up the Production of a Hydrogenation Reaction and Isolation of Pharmaceutical Intermediate”, Org. Process Res. Dev. (2015) 19, 236−243.
- Chanda, A., Daly, A., Foley, D., LaPack, M., Mukherjee, S., Orr, J., Reid, G., Thompson, D., Ward, H., “Industry Perspectives on Process Analytical Technology: Tools and Applications in API Development”, Org. Process Res. Dev. (2015) 19, 63−83.
- Rehbein, M., Husmann, S., Lechner, C., Kunick, C., Scholl, S., “Fast and calibration free determination of first order reaction kinetics in API synthesis using in-situ ATR-FTIR”, European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 126 (2018) 95–100.
モデル/仕様
リアルタイムの化学反応のモニタリング
関連文書
化学反応のモニタリングに対応するFTIR
データシート
ReactIRの引用
パンフレット
アプリケーション
関連製品とソリューション
ソフトウエア
ポスター
サービス

サービスプログラムの紹介 – 機器に合わせたカスタマイズ
メトラー・トレドは、設置から保守点検、校正、機器の修理まで、お客様の測定機器のライフサイクル全般にわたってサービスサポートを提供いたします。
FAQ(よくある質問)
ReactIRについてのよくある質問
FTIRについてよくある質問
FTIRとは
フーリエ変換赤外分光法(FTIR)は、分子ごとの構造および分子混合物の組成を理解するために産業分野およびアカデミアの両方の研究室で広く使用されている分析方法です。 FTIRでは変調された中赤外エネルギーを利用してサンプルを評価します。 赤外光は、分子中に存在する官能基固有の振動エネルギー(周波数)で吸収されます。 分子の振動スペクトルに関連する特徴的なバンドパターンが形成されます。 これらのスペクトルバンドの位置と強度によって分子構造の詳細が得られることから、FTIRは非常に有用な技術とされています。 FTIRは従来の分散赤外線による手法に比べて大きく進化していますが、その理由にはいくつかあります。例えば、FTIRスペクトル全体を僅かな時間で取得できることや、スペクトルの積算によりSN(信号-ノイズ)比の改善などです。
FTIRの用途は
FTIRは、製薬、化学、ポリマー産業で重要な分析手法となっており、幅広く活用されております。 FTIRは産業分野とアカデミアの研究室で広く使用され、反応の速度論やメカニズム、反応経路、触媒サイクルの理解を深めるために役立っています。 品質保証/品質管理のラボでは、FTIRは、原材料、中間化合物および最終製品の含有量と純度の仕様確認のため活用されています。 化学製品の開発では、FTIRの利用が化学反応のスケールアップ、反応収率の最適化、不純物の最小化に役立っています。 化学製品の製造では、FTIRはプロセスの安定化と適切な管理に用いたれ、最終製品の仕様と不純物プロファイルの確認のため適用されています。
FTIRの仕組み
古典的なFTIRは光源(通常は赤外線放射器)、インターフェロメータ(マイケルソン干渉計)、サンプルコンパートメント、熱検出器またはフォトニック検出器で構成されております。 光源からの広帯域赤外線エネルギーはビームスプリッタにより2方向に分離されます。 1つは固定鏡に、もう一方は移動鏡に向かいます。 分離されたれら2つの赤外線エネルギーはビームスプリッタに戻り再結合して、干渉による強弱のパターン、インターフェログラムを生成します。 この変調された赤外線ビームはサンプルに伝わり、そこでサンプルの分子構造(官能基)に吸収されます。 結果的に得られるインターフェログラムはフーリエ変換で処理され、強度 vs 時間のシグナルを強度 vs 周波数にスペクトルに変換します。 シングルビームサンプルスペクトルを基準スペクトルと比較することでバックグラウンドの寄与を除去し、一般的な赤外線吸収/透過スペクトルが得られます。
FTIRを使用する理由
多くの場合、反応を理解するには、正確な反応プロファイルを反応種ごとに作成する必要があり、濃度 vs 時間の情報が反応速度の決定につながります。 FTIRはこのような情報を得るための最適な手法であり、詳細な反応プロファイルを短時間で取得することが可能です。
FTIRが反応分析にもたらすメリットとは
反応分析に対してFTIRには2つのメリットがあります。 まず第一に、中赤外線の指紋領域を解析することにより化学種を個別に追跡できるので、反応メカニズム解析のヒントになります。 次に、ベールの法則では反応種の吸光度と濃度は比例関係にあります。 この関係性により、オフライン測定結果によりサンプル濃度を決定し、さらにそのデータポイントを使用して中赤外線プロファイルを規格化できます。 オフラインサンプルの濃度測定結果とin situサンプルのトレンドには相関関係があります。
他手法ではなく、FTIRを使用する理由
中赤外線全反射測定(ATR)技術には、分光分析などの他の分析手法よりも多くの利点があります。 化学反応の研究開発に際して次のような利点が活用されています。
- リアルタイムのin situ連続測定で、浸漬型のため反応容器に直接差し込むことができます。
- パスツール等によるサンプリングが不要で、in situの情報が得られます。
- 気泡や固体の影響を受けないため、水素化やあらゆる不均一系反応に適します。
- 水系の反応にも適しています
- 非破壊分析のため、化学反応の本質を評価できます。
- ベールの法則に従い、定性的測定と定量測定の両方が可能です。
In Situ技術を用いたFTIRによって、反応のリアルタイム情報を取得できます。 特に不安定中間体が含まれる場合、反応挙動についてのより深い知見を得られる重要なメリットがあります。
FTIRで得られたデータが重要な理由
連続的にデータを取得できることが非常に重要となっております。 FTIRではデータが自動で取得されます。通常は濃度情報は1分間間隔で取得され、毎秒4回の積算も可能です。 これは、速度依存性を理解するために多数の反応を実行するのではなく、僅かな実験で、反応を支配するパラメータが得られることを意味します。 つまり開発速度が劇的に短縮されることを意味します。 さらに、オフライン分析のサンプル調製のため、リアクター外に晒すことがないので、得られるデータはオフライン分析結果よりも高精度で得られます。
FTIRを活用している産業分野とは
FTIRは、製薬、化学、石油化学などの業界分野、そしてアカデミアの研究機関で利用されています。
製薬業界におけるFTIRの用途とは
- 有機合成
- グリニャール反応
- 水添反応
- 晶析
- 不斉触媒
- ハロゲン化
- 酵素触媒反応
- クロスカップリング反応
- 有機金属化学
- 溶液相と不均一触媒反応
化学業界におけるFTIRの用途とは
- 中間体
- 活性剤
- フレーバー/香料
- コーティング/顔料
- 農薬
- 開始剤
- バルクケミカル
- ポリウレタン重合におけるイソシアネートの追跡
- EO/PO
- 顕著な酸化反応
- ヒドロホルミル化
- 触媒プロセス
- ホスゲン化
- エステル化
アカデミア研究機関でのFTIRの用途とは
- 金属媒介化学
- 触媒反応
- C-H活性化
- メカニズム研究
- 反応速度論