オリゴヌクレオチドの形成は、大きい生体分子を酵素で切断することによって、または標的を定め有機合成によって形成することが可能です。有機合成の場合、有機ヌクレオチド合成は、ヌクレオシドホスホロアミダイト（オリゴヌクレオチドの主なモノマー要素）を合成する化学プロセスです。ヌクレオシドホスホロアミダイト（略してヌクレオシドまたはアミダイトとも呼ばれる）自体は、天然に存在するヌクレオシドや合成ヌクレオシドの誘導体です。
したがって、ヌクレオチドは、共有結合したヌクレオシドとリン酸基で構成される化合物分子です。意図した生成物を形成するには、ヌクレオチドを特定の配列で連結させます。オリゴヌクレオチドは短い核酸セグメントで構成されており、、互いに連結して一本鎖の生体高分子（「-mer」）を形成します。通常、ほとんどのオリゴヌクレオチド（略してオリゴ）は最大で20個（それ以上になることもある）の連結ヌクレオチドで構成されているため、低分子量のバイオ医薬品分子と考えることもできます。
製薬に関連する他の小分子と同様に、オリゴヌクレオチド合成でも、温度、pH、基質の品質などを慎重に制御する必要があります。オリゴヌクレオチド合成で使用される一般的なメソッドでは、ヌクレオチド配列が長く複雑になるに従って、収率、純度、コストの目標達成が困難になります。このような目標の達成にはプロセス分析技術（PAT）が有効です。
オリゴヌクレオチド、つまりオリゴは短い一本鎖または二本鎖の核酸セグメントであり、これらが互いに連結して一本鎖の生体高分子を形成しています。 個々のヌクレオチド塩基対は、従来の化学高分子を構成するモノマーと等価のものと考えることができます。ヌクレオチドは、窒素を含む塩基、5つの炭素を持つ糖分子（これら2つの部分がヌクレオシドと呼ばれる）、1つ以上のリン酸基の3つの部分からなります。 非天然型や非正規型の塩基でヌクレオチドを構成することもできます。一般的な例として、LNA（ロック核酸）、モルフォリノ、構造が修飾された塩基または主鎖などがあります。
ヌクレオチドが複雑に連結すると、生物学的に重要なRNA/DNA生体分子が形成されます。一本鎖生体高分子であるRNAの場合、糖はリボースです。DNAでは、二本鎖分子に糖としてデオキシリボースが含まれます。これは、重要なオリゴヌクレオチドの構成要素であるデオキシリボ核酸とリボ核酸の短い配列です。これらのヌクレオチドの固有の連結により目標の生体分子が形成され、生物学、医学、法医学、臨床アプリケーションで使用されます。
オリゴヌクレオチド(dT)プライマーおよびプローブ
合成オリゴヌクレオチドの最も一般的な用途は、比較的短いプローブとプライマー（最大30-mer）で、幅広く使用されています。このためには、これよりも大きい標的DNAまたはRNA鎖（標的配列）と対になる、または「逆相補的」なヌクレオチド配列の合成が必要です。通常、プライマーとしては、長短含め数百万から数十億個の標的配列のコピーを生成する用途など、酵素反応の開始を目的にオリゴを使用します。例として、ポリメラーゼ連鎖反応（PCR）やサンガーシーケンシング法が広く知られています。オリゴ(dT)プライマーのアプリケーションには、DNAシーケンシング、遺伝子発現、クローニング、分子診断などがあります。
プローブとしては、オリゴは特定のDNAまたはRNA標的配列を識別し、その配列に結合して、指定物質内でのこの配列の有無を示します。オリゴプローブは、ノーザンブロッティング（RNA）やサザンブロッティング（DNA）などのブロッティング手順、および遺伝子発現の変化の検出、遺伝性疾患のスクリーニング、特定の病原体の識別（分子診断）に使用されるマイクロアレイ内のフルオロフォア結合された配列などで利用されます。
オリゴ治療/遺伝子治療
治療での用途としては、一般に20～30merの化学種であるアンチセンスオリゴヌクレオチド（ASO）は、自然生物学を活用して、望ましくない、または過剰に活性化したRNA配列の遺伝子発現抑制や遺伝子サイレンシング（破壊）を促進します。この結果、疾病の原因となったり、疾病を助長したりする可能性のある特定の損傷タンパク質や過剰に活性化したタンパク質の発現をブロックします。近年、オリゴヌクレオチドベースの治療に関する研究が強化されており、数種類の医薬品が認証を受けています。
合成ヌクレオチドの今後の用途：DNA/RNAワクチンモダリティの調査
オリゴヌクレオチドの厳密な定義からは外れますが、mRNAやプラスミド、ベクターベースの核酸など、数百または数千個の塩基からなるDNAベースやRNAベースのワクチン製品は、進化する合成ヌクレオチド技術の最前線を代表するものです。
基本的に、病原細菌やウイルスの不要なまたは有害な部分は、DNAワクチンやRNAワクチンに含める必要はありません。代わりに、このような核酸ベースのワクチンには、病原体のDNAやRNAのわずかな部分のコードだけを含めます。これらのDNA鎖やRNA鎖は、その病原体の個々の抗原や断片を生成するように患者の免疫系に指示を与えます。近年のコンピューティングやin silicoモデリングを使用すれば、設計の対象となる適切な標的配列を指定することで、これらのオリゴヌクレオチドワクチンモダリティをわずか数日間または数週間で作成することができます。核酸ベースのワクチンでは、プラットフォーム技術として、構成要素や原材料の標準的なセットを使用するため、無数の組み合わせをほぼ自由に作り出すことができます。このため、従来のワクチンモダリティと比較して、比較的低いコストで簡単に生成できます。ただし、これは、バイオ医薬品業界の成熟過程にある枠組に過ぎず、新たな課題に絶えず対応している状況です。中には、オリゴや長い核酸生成物に固有のものや、他のバイオ医薬品モダリティと共有のものがあります。
オリゴヌクレオチド合成は、ヌクレオチドを特異的に連結させることで意図した配列を持つ生成物を形成する化学プロセスです。オリゴヌクレオチドの生成には、充てん層カラムを用いた連続固相合成が一般的に使用されます。場合によってはバッチ、スラリー反応を使用することもあります。
標的オリゴマー配列の生成プロセスには、特定の合成ステップからなる数回のサイクルが必要です。最初のステップでは、固相担持ヌクレオチドの4,4’-ジメトキシトリチル保護基が除去されます。次に、ホスホロアミダイトモノマーが活性化され、固相に結合したヌクレオチドの遊離ヒドロキシル基によってすばやく結合し、亜リン酸トリエステルリンクが含まれるジヌクレオシドが生成されます。3つめのステップでは、亜リン酸トリエステルが酸化されます。（最初のサイクルの）最後のステップでは、次のサイクルで不要な副生成物が形成されないように、未反応の担持ヌクレオシドがアセチル化により「キャップ」されます。
オリゴヌクレオチドの長さは、その配列を構成するヌクレオチドの数によって定義されます。命名法から、ヌクレオチド20個分の長さを持つ配列は「20-mer」と定義されます。オリゴの長さは非常に重要で、用途によって異なります。たとえば、短鎖長(short-mer)オリゴはPCRで広く使用されており、非常に長い配列（塩基が200個以上）は、クローニングやCRISPR編集などの条件の厳しい用途で使用されます。特殊な目的の長鎖長(long-mer)オリゴの合成は難しく、純粋な配列を得るには、効果的な合成制御と精製メソッドの両方が必要です。平均的には、ほとんどのオリゴの長さは60-mer未満です。オリゴを合成するには、ヌクレオチドを逐次追加する反応サイクルを繰り返す必要があるため、必要な配列が長くなるほど、不要な副生成物（欠失した、または切断された配列が含まれる）が形成される可能性が高まります。
品質、数量、コストの目標に応じて異なる精製メソッドが使用されます。たとえば、塩を含まないオリゴから有機合成の副生成物は除去されますが、配列のエラーは残ります。このような脱塩オリゴは、PCRなどの日常的な用途では、コストや有効性の面から有効です。 これよりも条件の厳しい用途では、逆相クロマトグラフィによって不要な配列を生成物から除去しますが、この方法ではゲル電気泳動法ほどの効率は得られません。高純度の配列生成物が得られますが、大量に生成することは困難です。特に臨床用途では、合成全体でもダウンストリーム精製プロセスでも収率の維持が常に問題になります。
従来の固相有機合成では、一般的に、反応条件の影響を受けない高分子ポリマーや特殊ガラスビーズを使用します。これらのビーズは、反応物質、試薬、溶媒が流れるカラム内に入れることができます。ビーズは、基質分子が共有結合し、その上で化学反応が発生するプラットフォームとして機能します。基質分子上の特定の官能基の保護と脱保護は、合成を行い、意図した生成物を取得するための鍵となります。 合成生成物は、生成物とその基盤となる高分子ビーズとの結合を化学的に切り離して除去します。
固相合成は、合成のさまざまなステップで不純物と未反応物質が洗い流されるため、精製された生成物をすばやく得たい場合に効果的です。さらに、合成全体がコンピュータ管理と自動化に適しています。 固相合成は、カスタムペプチド/オリゴヌクレオチドの生成で最も一般的に使用されているメソッドです。オリゴヌクレオチドの場合、ヌクレオチドを順次加えて標的配列を形成するには、サイクルを何度も繰り返す必要があります。
固相オリゴヌクレオチド合成には、鎖長が伸びるにつれて収率が低下するなどの多くの課題があります。表面に固定された1つ以上の鎖が、隣接する鎖のそれ以降の伸長を妨げるといった立体障害が、低い収率を引き起こすメカニズムと見なされることが頻繁にあります。
これらを始めとするいくつかの課題に対応するために、液相オリゴヌクレオチド合成にはさまざまな方法があります。
液相合成の基本的なステップの多くは、固相合成と似ています。主な違いは、合成が液相内で（つまり、固体担体上の表面ではなく）行われるという点です。このプロセスも複数のサイクルで行われるため、伸長したオリゴヌクレオチド生成物を保持しながら未反応の試薬を除去するための付随的な方法がいくつかあります。
PCRをオリゴヌクレオチド合成に使用する技術は1985年に確立されました。1986年に、Taqポリメラーゼ酵素の使用が初めて導入されました。しかし、産業用オリゴヌクレオチド合成では、以下の3つの主な理由により、酵素によるオリゴヌクレオチド合成を採用することは困難でした。
現在、化学修飾されたヌクレオチドストックを使用したASO合成が可能な改変ポリメラーゼの研究開発が続けられています。
オリゴヌクレオチド合成の特性は複雑なため、プロセスの詳細な観察、反応機構と逸脱範囲の把握、実行可能な合成の高品質な制御が有効です。 PATを使用したリアルタイム分析によって、時間がかかる、または低速のオフライン分析の必要性を最小限に抑える、または不要にすることができます。
James W. Rydzak, David E. White, Christian Y. Airiau, Jeffrey T. Sterbenz, Brian D. York, Donald J. Clancy, and Qunying Dai, "Real-Time Process Analytical Technology Assurance for Flow Synthesis of Oligonucleotides", Organic Process Research and Development (2015), 19, 203-214.
筆者らは、自動固相オリゴヌクレオチド合成は十分に確立されているが、合成に関わる化学反応は依然として課題が多く、高コストであると述べています。 製造時に発生するリスクには主に以下のようなものがあります。
これらのリスクを特定し、対応できない場合は、プロセス全体が無駄になる可能性があります。 このため、中赤外データに基づく識別/定量/MSPCモデリングとリアルタイムの分光モニタリングの使用を組み合わせた方法を評価しました。 その結果、ReactIRで合成プロセスをリアルタイムで確認し、管理できること、オリゴヌクレオチドの自動合成を改善できることがわかりました。 特に、このアプローチの測定感度、情報の詳細さ、対応範囲の広さ、履歴の利用の容易さから、このような化合物の製造に関する数多くの主な課題に直ちに適用できることがわかりました。その中でも最も重要なのは、オンラインによる配列と純度の確認です。
連続フロー条件下で実行される化学反応のin situ FTIRとラマン分光測定によるリアルタイムモニタリング機能は十分に実証されており、オリゴヌクレオチド合成の主なステップに適用できます。
高精度に制御された合成環境であれば、反応実験結果の信頼性が向上します。自動合成装置では、すべての重要なプロセスパラメータを同時に収集し、信頼性と再現性を高めます。
