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食塩（塩化ナトリウム、NaCl）は、数千年にわたり、食品の調味料や保存料として世界中で広く使用されてきました。ナトリウムイオンと塩化物イオンは生理的プロセスに重要な役割を果たしますが、ほとんどの国において、ナトリウムの摂取量は成人と子供のどちらも必要栄養量を超えています。
ナトリウムの摂取量が多すぎると、高血圧の危険因子となることが知られています。心疾患の発生を減らすため、世界保健機関（WHO）は、2025年までに一人当たりの食塩の消費量を30％削減し、最終的にはナトリウムの摂取量を1日2000mg以下に抑えることを目標に掲げています。
この取り組みの重要な側面の1つは、明確で分かりやすい栄養成分表示ラベルを加工食品全般に貼付することです。このようなラベル貼付の要件を満たすために、また焼き菓子、加工食品、インスタント食品などにはナトリウム源となる複数の食品成分が含まれることから、正確なナトリウム含量の測定法を選択することが食品・飲料メーカーにとって重要になっています。
塩化物イオン、ナトリウムイオン測定や、塩分濃度を効果的に測定する方法について詳しくは、「食品中の塩分濃度測定入門: 食塩/ナトリウムイオン含量測定のための厳選テクニック」をダウンロードしてください。
食塩は、味の改善、色や食感の調整、有効期限の延長を目的として使用されます。また加工食品メーカーは、食品全体の塩分濃度を測定することで、固体、液体、ペースト状、粉末など製造する食品の形態にかかわらず、これらの属性をバッチごとにモニタリングできます。
ナトリウムの過剰摂取の最も大きな原因は食塩ですが、重曹（炭酸水素ナトリウム）などの化学膨脹剤にも、硝酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、安息香酸ナトリウムなどの保存料にもナトリウムが含まれています。また、塩化カリウム（食塩の代替となる低ナトリウム物質）を加えることで、塩化物イオンの含有量が増える可能性もあります。
入荷時、製造ライン上、または最終段階での品質管理のいずれにおいても、ナトリウムや食塩を正確に検査することにより、食品加工の製造工程において、想定した特性を有する商品を製造し消費者に届けることができます。そのような検査によってナトリウムの成分表示が正確なものになり、消費者は自身が食する食品について確かな情報を得た上で商品を選択できます。
塩分濃度測定やナトリウム含量測定にはさまざまな方法があります。この用途紹介ページと関連ガイドでは、食品中の塩分濃度測定、ナトリウム含量測定、塩化物イオン測定、バルクミネラルの評価について、各種の方法をご紹介しています。
主な内容は次のとおりです。
後者は、複数標準添加法により実施するか、または直接実施できます。滴定により食品中の塩分濃度測定を行う方法またはイオン選択電極を用いる方法は、いずれも実施しやすく、信頼性が高く、明快で、標準的な実験器具だけで行えます。
他にも、食塩、ナトリウム、またはミネラルの測定方法として、温度滴定、密度測定、灰化法、元素分析などにも触れています。また、食塩、塩化物イオン、ナトリウムの各種の測定をサポートするメトラー・トレドの測定機器も紹介しています。
塩分濃度の測定方法として最も確立されている滴定法は、塩化物イオン測定に基づく方法です。滴定液に硝酸銀（AgNO3）を使用することから「銀滴定」と呼ばれ、現在でも食品検査機関で一般的に使われている方法です。
銀イオン（Ag+）はCl-イオンと反応して溶液中で沈殿し、Ag+との反応によって塩化物がすべて消費されると、サンプル溶液中に溶存Ag+イオンが蓄積され滴定容器内の電位が上昇します。これは滴定の終点を示し、塩分濃度を算出することができます（サンプル中の塩化物イオンがすべてNaCl由来であるという前提に基づく）。
塩化物イオンを速やかに測定でき専用の機器も必要ありませんが、前述のように、この方法ではNaCl以外を由来とするナトリウムイオンが存在することが想定されていません。つまり、この方法は多くの場合に有効ですが、どのような塩分濃度測定にも適しているわけではありません。
測定機器の例として、メトラー・トレドの滴定装置があります。
連続標準添加法により、サンプルマトリックス内のナトリウムを0.1mg/L（4.7 × 10−6 M）まで検出します。少量のナトリウム標準液をサンプルに数回連続して添加し、ナトリウム濃度を高めます。既知の量の標準液を添加したときの電位差から、ネルンスト式に基づく反復的な評価アルゴリズムによりサンプルの固有のナトリウム濃度を測定します。
重要なのは、MSAによる測定は検出限界付近で実施でき、温度の影響を機器で補正して高い精度を得られることです。最適なサンプル調製と定量化のために、検査前にサンプル濃度の近似値を把握しておく必要があります。
測定機器の例には、メトラー・トレドのSodium Analyzer Easy NaまたはExcellence滴定装置（自動化を含む）があります。
ナトリウムイオンを調べる温度滴定は、食品製品中のナトリウムを定量化するもう1つの方法です。温度滴定は、発熱性の高いエルパソライト（NaK2AlF6）の形成に依存します。熱の発生は高分解能の温度プローブで記録され、発熱を使用して元のサンプルに含有されるNa+イオンの量を推定します。
この反応は、フッ化アンモニウムやフッ化水素アンモニウム（NH4F、NH4HF2）が存在する中で進行し、過剰のカリウムとアルミニウムを必要とします。前者の化合物には毒性があり腐食性も高いので、適切な安全対策を講じる必要があります。
この分析に適した機器には、メトラー・トレドのExcellence滴定装置と温度測定電極があります。
食品中（通常は水溶液中）のナトリウム量のレベルは、滴定装置やイオンメータと組み合わせたISEにより直接測定できます。正確さはサンプル濃度を推定するための校正曲線の使用に応じて異なり、そこでは電極の反応がサンプルと標準液で同じであることが前提となります。このために、ナトリウム標準液の希釈系列を使用します。
MSAと同様に、検出される電位は溶液中のイオンの活動度に比例するのでイオンの濃度にも比例します。測定後に、組み合わせられた機器がサンプルのイオン濃度を自動で計算し結果を表示します。
食塩、ナトリウム、塩化物イオン、ミネラルの含量の測定法には、特異性のレベルが異なる手法が各種あります。全NaClや無機塩類の測定のような用途では、特殊な装置が不要な方法もあります。
塩化物イオン、ナトリウム、またはミネラルの含量測定に好適な方法には、他にも以下のようなものがあります。
前述のように、食塩またはナトリウム含量の測定には、直接測定と間接測定があります。どちらの方法を選択するかは、イオン測定値の想定範囲と、正確さの要件や食品の組成などの要因によります。
測定方式 | LOQ | RSD |
食品中の塩化物イオンの銀滴定 | 35ppm | 1% |
連続標準添加法（MSA） | <1ppm | 1% |
食品中のナトリウムイオンの温度滴定 | 100ppm | 2% |
食品中のナトリウムの直接的な測定 | <1ppm | 4% |
ナトリウムまたは食塩の測定方法の選択では、選択した方法によって想定されるイオン濃度範囲内で信頼性の高い測定値を得られることが重要になります。ここで説明した方法については、測定範囲の説明と便利な参照表が、無料の塩分濃度測定入門ガイドの付録2に掲載されています。
食品メーカーが採用する測定手法は、最適な製造プロセスとスループットを維持しながら地域の法令遵守にも対応する必要があります。用途については、以下のようなさまざまな点を考慮して、最適な方法で食塩またはナトリウムの含量を測定する必要があります。
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メトラー・トレドは、食品中のナトリウム測定や塩化物イオン含量の評価などの各種方法についてのアプリケーションノートを提供しています。これらには、以下のような食品の食塩/ナトリウムの含量を測定するアプリケーションが含まれています。
塩分濃度測定に役立つアプリケーションノートの一覧やそれらの文書にアクセスするための便利なガイドについては、無料の塩分濃度測定入門ガイドをダウンロードしてください。
通常、食品では、ナトリウムは主に食塩（NaCl）に由来しますが、食品の他の成分に由来するナトリウム（Na+）イオンも存在し、ナトリウムの総含有量を高めています。食品の種類によって測定対象のナトリウムイオンや塩化物イオンの由来となる食品成分は異なり、それぞれに適した食塩/ナトリウムの含量測定の手法も異なります。
食品中のナトリウムの含量を測定するには、イオン選択電極、滴定、比重測定などの方法があります。詳しくは、無料の食品中の塩分濃度測定入門ガイドをダウンロードしてください。
塩化ナトリウムは一般的に食塩として知られていて、イオン化合物の一種です。化学式はNaClで、ナトリウムイオンと塩素イオンの割合が1:1であることを表しています。それぞれのモル質量（22.99g/molと35.45g/mol）を考慮すると、100gのNaClサンプルには39.34gのナトリウム（Na）と60.66gの塩素（Cl）が含まれています。食品中のNaClまたは食塩の正確な測定は、味や有効期限、さらに健康の側面から非常に重要です。
食塩/ナトリウム含量の算出は、ナトリウムまたは塩素イオンを測定するときにどの手法が最も適しているかによって異なります。上記の「用途に応じた正しい食品中の塩分濃度測定方法の選択」を参照するか、無料の食品中の塩分濃度測定入門ガイドをダウンロードしてください。
可溶性の食塩または水溶液の塩化物イオン含量は、塩化銀としての塩素イオンの沈殿によって測定できます。
AgNO3 + NaCl → NaNO3 + AgCl↓
銀滴定では、反応で生成した沈殿物を事前に計量済みのろ過用サンプルパンに集めて測定できるため、正確な結果を短時間で簡単に得られることがあります。
滴定による塩分濃度測定は、今も多くのラボで行われています。銀滴定は、滴定液に硝酸銀（AgNO3）を使用し、塩化銀（AgCl）が難溶性であることを利用します。塩化銀は以下の反応により溶液内に沈殿します。
AgNO3 + NaCl → NaNO3 + AgCl↓
銀リング電極を使用して、反応後に溶液中に残留する銀イオンの電位を測定できます。塩化物イオンがすべて消費されることで上昇する電位は滴定の終点を示し、そこから塩分濃度を算出できます（サンプル中の塩化物がすべてNaCl由来であるという前提に基づく）。
ナトリウムイオンの温度滴定では、エルパソライト（NaK2AlF6)）が高い発熱を伴う反応で形成されます。熱の発生を利用して、サンプル中のNa+イオンの量を推測できます。
硝酸アルミニウム九水和物と硝酸カリウム（それぞれAl(NO3)3 • 9H2OとKNO3）を含む滴定液を用いて、フッ化アンモニウムまたはフッ化水素アンモニウム（NH4F、NH4HF2）が存在する中で以下のように反応が進みます。
Na+ + 2K+ + Al3+ + 6F- → NaK2AlF6↓
エルパソライトの形成によってエネルギーが放出されると、当初のサンプルに含有するナトリウムの量に応じて温度差が生じ、温度計センサで測定されます。
食品中のナトリウムの直接測定での検出限界は、0.1mg/L（4.7 × 10−6 M）、定量化の限界は0.3mg/L (1.4 × 10−5 M）です。使用するナトリウム感応電極の直線性測定範囲は0.3～70,000mg/L（1.4 × 10−5 M～3 M）です。特定サンプルのナトリウムの含量がこれよりも多い場合は、サンプルを希釈する必要があります。
