本研究は、二相系条件下における鈴木・宮浦クロスカップリング反応の詳細な反応機構を解析し、相間移動触媒(PTC)が主要なトランスメタル化経路を変化させることで、反応を大幅に加速することを明らかにしました。
著者らは、ベンジル求電子剤を用いた難易度の高いモデル反応系において、PTCが従来のオキソパラジウム経路からボロネート主導型経路へ反応機構を変化させることを示しました。その結果、反応速度を最大12倍向上させるとともに、触媒使用量を0.001 mol%まで低減できることを明らかにしました。
この機構的理解は、オンラインHPLC測定によるDirectInject-LC技術の使用から得られたものであり、不均一系反応混合物においても、NMRやIR測定では取得が困難な再現性の高いリアルタイム反応速度データを提供します。
この自動LCプラットフォームにより、求電子剤の消費、ボロネートの生成、ハロゲン化物による阻害、ならびにパラジウム触媒の化学種分布(スペシエーション)を高精度に追跡できます。これらのデータは、手動サンプリングでは避けられない試料劣化や測定アーティファクトの影響を受けません。
さらに、高密度の反応速度データを解析することで、水相と有機相の割合の影響、水酸化物イオンとハロゲン化物イオンの拮抗作用、ならびにPTCがパラジウム化学種分布とアリールボロン平衡の双方を制御していることが明らかになりました。これにより、律速段階となるトランスメタル化反応の理解が深まり、広範な基質に適用可能な低触媒量プロセスの実現に貢献しています。
Shi, Y., Derasp, J. S., Maschmeyer, T., & Hein, J. E. (2024). Phase transfer catalysts shift the pathway to transmetalation in biphasic Suzuki-Miyaura cross-couplings. Nature Communications, 15(1), 5436. https://doi.org/10.1038/s41467-024-49681-4