代替肉の研究開発と分析ソリューション

植物由来の代替肉では、一般的に穀物または豆類が使用されます。  原料となる穀物は、小麦、オート麦、トウモロコシなどです。豆類には、レンズ豆、黒豆、大豆、エンドウ豆などのマメ科植物の食用種子が含まれます。

豆類/マメ科植物は、タンパク質、ビタミン、ミネラル、食物繊維、複合炭水化物が豊富で、大豆やエンドウ豆由来の代替品が消費者に好まれます。これらは、約65%のタンパク質を含む濃縮物として、または約85%のタンパク質を含む分離物として売られています。大豆とエンドウ豆には窒素固定力があり、土壌の健康と生物多様性を支えます。そのためこれらは、環境負荷が最も少ないマメ科植物とされています。

低価格、アレルゲンの心配がほぼないこと、さらにバリューチェーン全体への投資により、植物由来のタンパク質は現在、意識の高い消費者にとって最良の代替肉の1つとなっています。

昆虫は世界中の約20億人にとって一般的な食料源でありながら、西洋諸国では昆虫由来の製品は依然として新たな食糧源と考えられています。昆虫タンパク質の濃縮物は、動物性タンパク質よりも環境への影響が少ないですが、植物性タンパク質源よりも影響が大きくなります。昆虫由来のタンパク質は溶解度が低く栄養特性にばらつきがあるので、大豆や植物性タンパク質と組み合わせるなど、代替肉に加えるその他のタンパク質源として理想的です。昆虫由来の食品は、タンパク質源として関心が向けられている反面、アレルギー反応や重金属または芽胞形成細菌などの汚染のリスクも含んでいます。

一般に、植物由来や昆虫由来のタンパク質は農作物や昆虫から抽出されますが、菌類、藻類、細胞培養の代替肉は、主にバイオリアクターでのバイオプロセスを通じて生産されます。

菌類由来の代替肉では、一般的にマイコプロテインを主成分として使用します。マイコプロテインは、菌の一種であるFusarium venenatumに由来する食品グレードのタンパク質の名前で、この菌は自然で発見され食品グレードのタンパク質として開発されました。

マイコプロテインは、幅広い代替食品製品に転用できます。菌類の繊維の長さは培養プロセスによって制御できます。時間をかけて菌類を成長させれば、その分繊維が長くなり、最終製品の質感が粗くなります。

マイコプロテインは乾燥重量の約50%のタンパク質を含有するので、代替肉として理想的です。このタンパク質量はグリルステーキ肉の成分に匹敵します。さらにステーキ肉よりも脂肪分が少なく、わずか13%の植物性脂肪、ゼロコレステロール、25%の繊維を含有します。

藻類由来の代替肉 – 過去には藻類のいくつかの種が食品添加物として使用されてきましたが、今では微細藻類が代替肉の研究開発にとって有望な新しい成分として、食品開発現場で注目を集めています。クロレラやスピルリナなどの微細藻類は、植物性タンパク質に使われる陸上の収穫物に比べて、成長が速く、タンパク質の含有量も多く、より優れた栄養品質を備えています。微細藻類は、タンパク質含有量が多いだけでなく、微量栄養素、多価不飽和脂肪酸、カロテノイド、生理活性化合物も含んでおり、健康に有益な要素を増やす機能的な特性をともないます。

藻類タンパク質濃縮物の色は緑色または黄色で、基本的にあまり好ましくない魚臭さがありますが、適切なプロセス条件が満たされれば植物由来の代替肉の栄養価を高めることができます。

培養肉は、畜産肉製品のもう1つの代替品です。他の製品とは異なり、このタイプの代替肉はタンパク質由来ではなく動物由来の製品でありながら、多くの動物を繁殖、飼育、屠殺するプロセスなしに製造されます。

培養肉では、動物の細胞の培養によって、畜産肉と生物学的に同等な細胞由来の肉を製造することを目指しています。この肉は、動物の幹細胞をバイオリアクターで培養してから、特定の足場で組織を形成する筋細胞への分化を誘導することによって製造されます。

培養肉は現時点では高価格ですが、代替肉の市場で競争力を得られるように、細胞由来のプロセスのコスト面での最適化も取り組まれています。

代替肉の研究開発は、味、食感、口当たり、栄養価の面で容易ではありません。

肉や魚には、必須ビタミンやミネラルなどさまざまな栄養素が含まれており、これらは「肉を使わない」食品では不足しがちです。肉製品の脂っこい口当たり、ジューシーさ、硬さ、歯ごたえも、再現が難しい要素になります。 このため、代替肉の開発に取り組む場合、食品調合の担当者は、肉製品らしい外観、風味、一貫性、栄養プロファイルを再現できるように、タンパク質を補完する他の成分を追加する必要があります。また、ナトリウム含有量を可能な限り抑えることも考慮されます。

代替肉製品の開発で健康面の不安に対処するためには、製品に一貫性があると同時に、地域の食品ラベル表示基準を満たすことが不可欠であり、パッケージに表示される栄養素の含有量が正しいことが求められます。このため、代替肉のラボ分析、プロセス中の管理、品質管理が重要になります。

代替肉の味や挙動を査定し、栄養、食感、口当たりの要件を満たすかどうかを評価するために、いくつかの分析方法が使用されます。

• 計量は、レシピの調合、培地の調製を行うときや、品質管理でHPLC/GC （農薬、微量金属）、タンパク質測定、乾燥物の計量、ソックスレー抽出前後の脂肪含量の測定、灰化処理後の総ミネラル含量の評価などの分析を行うためにサンプルや標準物質を調製するときに重要になります。      
• 水分率測定では、ハロゲン水分率測定、乾燥減量法、カールフィッシャー滴定などを用いて、原料や製品に含まれる水分をさまざまな工程で測定します。   ハロゲン水分率測定により、原料と製品の品質が保証され、有効期限を決めることができます。
• pH測定は、代替タンパク質の溶解性を確保する上で、製品開発中の重要な要素になります。  例えば、大豆タンパク質はpH 4.5～6.0で溶解しますが、クロレラ由来のタンパク質はpH 2.0～12.0で溶解します。pH測定は品質管理においても重要で、これにより最終製品に瑕疵がないことを評価できます。  
• 定量分析、例えばナトリウム含量測定、ケルダール法に準じたタンパク質定量のための滴定、ブドウ糖/果糖やビタミン含量のための紫外可視分光測定、ソックスレー法による脂肪含量の測定、灰分・繊維含量測定などは、代替肉の品質管理で一般的に行われています。  
• 物理的な分析、例えば密度、屈折率、融点、UV/VIS測定などは、成分や原材料の純度を示す指標になります。 
• 微生物学的な調査は、潜在的な細菌汚染の性質と程度を評価し、最終製品の保存期間を査定するために重要になります。 ピペット、天びん、pHメータなどの機器は、寒天培地の調製に一般的に使用されています。
• 熱分析は、製品の保存期間と製造プロセス全体での食品添加物の挙動を評価するために使用されています。  TGA（熱重量分析）は、代替肉の加熱時の質量と分解の調査に使用できます。またDSCは、タンパク質の変性、脂肪の結晶化挙動または、代替肉の製造中に行われる加熱/冷却プロセスで添加剤が受ける熱変化を評価するために使用できます。   
• 細胞培養モニタリングは、バイオプロセス由来の代替肉タンパク質に重要な要素です。pHや溶存酸素などのパラメータは細胞の増殖を評価する要素であり、培養プロセス全体を通じてインラインでモニタリングする必要があります。    

メトラー・トレドのラボ用分析ソリューションは、代替肉の開発と品質管理のライフサイクル全体を支援するように設計されています。研究室から製造施設に及ぶ幅広い作業をサポートし、正確なラベル表示のための個別栄養成分の定量化など、原材料や新規の材料の正確な評価に対応します。