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熱分析アプリケーションマガジン UserCom 16 (日本語版)

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UserComは、熱分析に関わる研究者向けのアプリケーションマガジンです。

熱分析 UserCom 16(日本語版)
熱分析 UserCom 16(日本語版)

熱分析 UserCom 16内容

TAのヒント

  • DMAカーブの解釈、パート2

ニュース

  • HP DSC827e のご紹介
  • DSC と TGA 用の試料容器セット

アプリケーション

  • DSCによる医薬品のキャラクタリゼーション
  • 動的機械的分析によるガラス転移温度の決定
  • ADSCによる非晶質リニア・ポリエステルの低温結晶化と融解の調査
  • IsoStep™を用いた乾燥とガラス転移

DSCによる医薬品のキャラクタリゼーション

はじめに

活性物質と賦形剤の間の相互反応が、生態系の中での薬の薬理学的性質と挙動に影響を与えるおそれがあることはよく知られています。

本研究では、賦形剤と活性物質としてのピロキシカムの混合物を粉砕してDSCで分析しました。活性物質ピロキシカム(4-ヒドロキシ-2-メチル-N-ピリジニル-2H-1,2-ベンゾチアジン-3-カルボキシアミド-1,1-ジオキサイド)は、変形性関節症と慢性関節性リウマチの治療に使用される非ステロイド系薬剤である。これは、極小投与量で治療効果を示し、ほとんど副作用がない。この薬の作用機序が、プロスタグランジン生成の妨害と酵素シクロオキシゲナーゼの阻害にあることは確実です。

活性物質そのものに加えて、ピロキシカム錠剤は以下の賦形剤を含有しています:無水ラクトース、ラクトース一水和物、102タイプ微結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウム。

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動的機械的分析によるガラス転移温度の決定

はじめに

ガラス転移温度は、ポリマー材料の技術的用途を判定する重要な基準である。エラストマーの応用範囲は、通常ガラス転移温度よりも有意に大きい温度に制限され、これは変形挙動ができる限り塑性エントロピーから遠ざかるようにするためです。

しかし、ポリマーのガラス転移温度は、周波数に強く依存しており、エラストマーの変形は時間に依存することが通例である(例、シール、タイヤの表面など)。これは、準安定状態で(例えば、DSCによって)測定されたガラス転移温度が、動的な応力を受ける材料の低温挙動のキャラクタリゼーションの良い基準にはならないことを意味しています。

動的な応力を受けるエラストマー材料の温度限界は、周期的な応力をかける方法を用いてガラス転移温度を測定することによって決定することができます。もちろん、この測定における周波数は、コンポーネントが実際に応力を受ける周波数に一致させるべきです。

このような測定は、例えば、測定機器の測定範囲よりも有意に高いかまたは低い周波数では不可能である場合には、そのときには時間-温度重ね合わせ原理を用いた外挿によってガラス転移温度を求めることができます。ガラス転移温度と計測する測定周波数の間の定量的関係は、半経験的WLFまたはVogel-Fulcher近似式によって求めることができます。

本稿では、いくつかの主要エラストマー(NR、BR、SBR、NBR、IIR)について温度依存と周波数依存のせん断弾性率を測定することによって、周波数と時間の間の経験的関係を決定しました。半経験的WLFまたはVogel-Fulcher近似式を用いて時間-温度重ね合わせ原理の定量的記述を実施しました。

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ADSCによる非晶質リニア・ポリエステルの低温結晶化と融解の調査

はじめに

1960年代初めに導入されて依頼、示差走査熱量計(DSC)は、ポリマーの結晶化と融解を調査する主要テクニックの一つとして使用されてきました[1]。(P.29)

ポリエチレンテレフタレート(PET)の低温結晶化と融解は、非等温的DSC測定によって分析されることが多く、そのときの結晶化度は、ピーク面積の積分によって結晶化と融解のエンタルピーから決定されます。[2,3]。(P.29)

今回の研ADSCによる非晶質リニア・ポリエステルの低温結晶化と融解の調査究の目的は、温度変調式示差走査熱量計(ADSC)を用いてポリエステルの結晶化と融解を調べるとともに、従来型のDSCと比べて、この方法によって得られる追加情報を指摘することでした。

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文献

[1] B. Wunderlich, Thermal Analysis, Academic Press, New York, 1990.
[2] K. H. Illers, Colloid Polym Sci 258 (1980) 8.
[3] M. Schubnell, UserCom 13 (2001) 12.

IsoStep™ を用いた乾燥とガラス転移

はじめに 

DSC測定において複数の熱事象が同時に発生する場合、関係する各種プロセスを分離する方法が問題になります。よくあるのは、熱容量の変化に、たとえば、化学反応、結晶化、蒸発などの発熱ピークまたは吸熱ピークがオーバーラップすることです。様々なプロセスを分離する方法として考えられるものの1つは、従来型DSCの測定条件を色々変えてみることです。たとえば、昇温測定と降温測定を、速度と温度範囲を様々に変えて、種々のタイプの試料容器を用いて実行することができます。もちろん、これはかなり時間を費やすことになります。

IsoStep™は、このようなオーバーラップするプロセスの識別に使用できる新しいテクニックです。これによって熱容量カーブと不可逆的カーブが同時に得られます。

本稿では、様々な熱事象の分離を、スプレードライされた医薬物質のガラス転移の測定によって実証します。水分の蒸発中の熱容量の変化を決定するための類似成分の測定は、以前の記事でも説明しました[1,2] (P.34)。その延長として、含水量とガラス転移温度の間の関係を、IsoStep™を使用して定量的に分析します。パウダーは、ガラス転移温度が加工温度よりも低くなると固結しやすいので、この関係を知ることがパウダーの加工にとって重要になります。

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文献

[1] M. Schubnell, J. Schawe, UserCom 14 (2001) 5.
[2] M. Schubnell, J.E.K. Schawe, Int. J. Pharm., 192 (2001) 173.

ノウハウ