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熱分析アプリケーションマガジン UserCom 14 (日本語版)

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UserComは、熱分析に関わる研究者向けのアプリケーションマガジンです。

熱分析 UserCom 14(日本語版)
熱分析 UserCom 14(日本語版)

熱分析 UserCom 14内容

TAのヒント

  • TMA カーブの解釈

アプリケーション

  • 温度変調DSC(ADSC)を使った吸湿サンプルの乾燥物質の比熱決定
  • TGA/MS によるCNx の熱安定性の調査
  • DSC 測定条件の最適化
  • TGA-MS とTGA-FTIR によるアミノ樹脂の硬化調査
  • DSC 測定の再現性のあるエバリュエーション:ガラス転移に続く化学反応
  • 石炭の迅速な熱重量分析

ヒント

  • TGA-FTIR とTGA-MS 測定

温度変調DSC(ADSC)を使った吸湿サンプルの乾燥物質の比熱決定

はじめに

示差走査熱量計(DSC)によって測定されるサンプルに残留水分(または、一般に残留溶媒)が含まれていることは珍しくありません。したがって、従来のDSC エクスペリメントの測定カーブは蒸発によるブロードな吸熱ピークを呈しています。こういったピークが他のプロセスにオーバーラップしてエバリュエーションを困難することがざらにあります。さらに残留溶媒は他の効果にも影響を及ぼします。例えば、残留水分が可塑剤として振る舞いサンプルのガラス転移を低温側にシフトすることがあります。オーバーラップしている他の熱効果から残留水分の蒸発を分離するための1 つの方法は、温度変調DSC を使用することです。ADSC では、直線的温度プログラムに正弦波変調をかけます。その結果、正弦波になった熱流束が生じます。このような変調した熱流束カーブを解析することによってオーバーラップした効果を分離することが可能になります。この論文では、残留水分を含有する薬理活性物質を解析するために可能な手順を例にとって説明します。

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TGA/MS によるCNx の熱安定性の調査

はじめに

窒化炭素(CNX)は、ダイヤモンドに匹敵する硬度を持つ新素材です[1]。この化合物の薄膜は、上海の中国科学院のセラミック研究所においてルーチン製作されています。中国の研究者達は、この薄膜の熱安定性に関してさらに多くの事を知りたいと考えて、メトラー・トレドに助力を求めてきました。Schwerzenbach のメトラー・トレド応用研究所においてBalzers 製Thermostar 質量分析装置(MS)を接続したTGA/SDTA851e を使って、この材料のサンプルの調査が行われました。

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文献

[1] Cohen, M. L. , Phys. Rev. B 23, p. 7988, 1985

DSC 測定条件の最適化

はじめに

半結晶性ポリマーのキャラクタリゼーションは、通常DSC 昇温カーブを使って行われます。その手法から得られる数値は次のものになります:

  • ピーク温度(「微結晶の融点」)
  • ピーク面積(融解熱)

結果は、ある程度まで実際に使用された測定パラメータに左右されます。しかし、明らかに同一条件下であってもある程度は結果にばらつきが見られるものです。今回の研究の目的は、エレガントな一組の測定値を使って最適の測定パラメータを確立することでした。

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TGA-MS とTGA-FTIR によるアミノ樹脂の硬化の調査

はじめに

アミノ樹脂(アミノプラスト)の製造に使用されるモノマーは、尿素(尿素樹脂用)またはメラミン(メラミン樹脂用)とホルムアルデヒドです。ホルムアルデヒドは、アミノ基と負荷反応をしてN-メチロール基を形成します。基本的に、第一級アミンとの反応で2 つのメチロール基が形成されます。メラミン(図1)の場合は、ホルムアルデヒドの第一級アミン基への負荷反応(図2)は、第二級アミン基よりも速いものですが、それにもかかわらず6 倍のメチロール化が起きている可能性があります。しかし、尿素は2 倍のメチロール化しか行いません。アミノ樹脂は、500~1,500g/mol の分子量で予備縮合した形態で、通常は水溶液で市販されています。

 

図1: 尿素とメラミンの構造式
図1: 尿素とメラミンの構造式
図2: 酸により触媒されるメチロール基の形成を伴うアミン基へのホルムアルデヒドへの負荷反応
図2: 酸により触媒されるメチロール基の形成を伴うアミン基へのホルムアルデヒドへの負荷反応

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DSC 測定の再現性のあるエバリュエーション:ガラス転移に続く化学反応

はじめに

反応熱の再現性のある定量決定は、品質保証並びに研究開発において重要な役割を果たしています。それには、慎重な測定と信頼できるエバリュエーション手順の両方が必要不可欠です。現実には、ピーク面積の決定に当たって、最適のベースラインを選択することが困難なことが珍しくありません。これは特に、様々な比較的小さいか、またはブロードな熱効果が次々と起こるようなときによく当てはまります。本研究では、エポキシ樹脂のポストキュアリングを例にとって、このようなDSC カーブの再現性のあるエバリュエーションのためのメソッドを提示します。

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石炭の迅速な熱重量分析

はじめに

水分、揮発性物質、化学的に結合した炭素および灰の含有量の定量的決定は、永きにわたり各種の石炭の品質と経済的価値を判定するために利用されてきました。火力発電所の運転にとっては、灰分の含有量が高ければ不活性材料が運賃と廃棄物の処分費用を増大させるために望ましいことではありません。また、熱交換器の清掃回数を増やす必要があることも意味します。評価分析が正しく比較できるようにするために、分析手順が標準化され多数の標準メソッドで記述されてきました[1-10]。

かなり早くから熱重量分析装置用の測定ルーチンが開発され、それによって分析の迅速化が図られて自動化された分析が実行可能になっています。これらの手法は、標準的なマニュアルメソッドと比較されてきました[11-14]。

TGA(熱重量分析)は、石炭検査、たとえば、燃焼プロファイルの比較またはTGA-MS による揮発成分の性質の決定などにきわめて有用です。給湯システム中に形成する石灰沈殿物(湯あか)でさえもTGA によって調査されてきました[15]。

また他の用途でも、水分、揮発含有、すす、灰またはフィラーの定量が必要とされます。石炭分析に類似した標準化された熱重量分析手順が、現在ではエラストマー、熱可塑性プラスチックおよび熱硬化性プラスチック並びに潤滑剤の定量に用いられています[16,17]。

逆に、ゴムのカーボンブラック定量のために開発された手順[17]が、褐炭、亜炭、その他のリニューアブルな化石燃料の分析に使用されています[例、18]。

文献

  1. DIN 51718 Analysis of solid fuels - determination of water content and analysis moisture (in German).
  2. DIN 51719 Analysis of solid fuels - determination of ash content. (in German)
  3. DIN 51720 Analysis of solid fuels - determination of the content of volatile components. (in German)
  4. ASTM D3172 Standard Practice for Proximate Analysis of Coal and Coke.
  5. ASTM D3173 Standard Test Method for Moisture in the Analysis Sample of Coal and Coke.
  6. ASTM D3174 Standard Test Method for Ash in the Analysis Sample of Coal and Coke.
  7. ASTM D3175 Standard Test Method for Volatile Matter in the Analysis Sample of Coal and Coke.
  8. ISO 11722 as well as BS 1016-104.1 Methods for analysis and testing of coal and coke. Proximate analysis. Determination of moisture content of the general analysis test sample.
  9. ISO 562 as well as BS 1016-104.3 Methods for analysis and testing of coal and coke. Proximate analysis. Determination of volatile matter content.
  10. ISO 1171 as well as BS 1016-104.4 Methods for analysis and testing of coal and coke. Proximate analysis. Determination of ash content.
  11. Richard L. Fyans, “Rapid Characterization of Coal by Thermogravimetric and Scanning Calorimetric Analysis”, Presentation at the 28th Pittsburgh Conference in Cleveland, Ohio, March (1977).
  12. John W. Cumming, Joseph McLaughlin, “The thermogravimetric behavior of coal”, Thermochimica Acta, 57 (1982) 253-272.
  13. F. S. Sadek, A. Y. Herrell, “Proximate analysis of solid fossil fuels by thermogravimetry”, American Laboratory, March (1984) 75-78.
  14. Danny E. Larkin, “The development of a standard method”, ASTM STP 997 “Compositional analysis by thermogravimetry”, C.M. Earnest, Ed., American Society for Testing and Materials, Philadelphia (1988) 28-37.
  15. Paul Baur, “Thermogravimetry speeds up proximate analysis of coal”, Power, March (1983) 91-93.
  16. ASTM E1131 Standard Test Method for Compositional Analysis by Thermogravimetry.
  17. ISO 9924 Rubber and rubber products. Determination of the composition of vulcanizates and uncured compounds by thermogravimetry.
  18. M.C. Mayoral, et. al., “Different approaches to proximate analysis by thermogravimetry analysis”, Thermochimica Acta, 370 (2001) 91-97
ノウハウ