2019年5月より、質量の単位であるキログラムの基準がパリに置かれた国際キログラム原器（IPK）ではなくなり、 基礎物理定数を使用して定義されるようになりました。 メトラー・トレドは、この歴史的な再定義において重要な役割を果たしました。
1キログラムとは？近年、国際単位系（SI）は測定の基本単位を再定義し、現在は基礎物理定数を基準としています。
これまで、パリに置かれたIPKが1kgの質量の基準として使用されてきました。 しかし、この金属製の円柱の質量は数十年の間に変化し、 IPKの質量と、各国のキログラム原器との間に差が生じていました。 計量学の世界では、この状況は受け入れられないものでした。
世界中の何百名もの科学者が数十年をかけてキログラムの再定義に携わりました。 メトラー・トレドの多くのスタッフも当初から関わっていました。 「これは、計量学が過去200年間で経験した最大の変化です」と、メトラー・トレドの法定計量部門トップ、Luis Cachon氏は述べています。
メトラー・トレドは、新しい定義をサポートする2つのソリューションに多大な貢献を果たしました。 最高の精度レベルで質量を校正するマスコンパレータ、M_oneの開発がその一例です。 ドイツの有名なPhysikalisch-Technische Bundesanstalt（PTB）を始めとする国立計量標準研究所では、M_oneを使用して、超高純度シリコン製の新しい球体の基準物質の質量を測定しています。 単結晶シリコンのメリットは、結晶全体にわたり、その原子構造が均等に配置されていることにあります。 このシリコン球の体積と表面積を測定した後、ここに含まれる原子の個数を確認することができます。 このように、その原子の個数を使用してキログラムを定義できるため、各地の基準質量に依存することがなくなります。 この技術を採用している世界中の計量研究所でこのプロセスを再現することができます。 「この機器があれば、誰でも多かれ少なかれ独自のキログラムを作り出すことができます」と、ラボラトリー事業部のJavier Levitt氏は語っています。
キログラムを定義するもう1つの方法として、ワット天びんの使用があります。 ベルンのスイス連邦計量認定所（METAS）では、物理学者がワット天びんを使用して機械力と電力とを比較しています。 この天びんでは、電磁力を使用して質量を浮き上がらせます。 この実験にも、キログラムの持ち運びに欠かせないメトラー・トレドの測定用セルがM_oneとともに採用されています。
各国の計量研究所は、この2つから採用する方法を選ぶことができます。 「総合的に、すべてを自然基本定数にトレースできることによりキログラムの安定性がさらに向上します」とLuis Cachon氏は述べます。 「質量測定については、技術の進歩と同じ速度で精度が向上しています」。
ただし、消費者にとっては何も変わりません。 この再定義は、日常生活には一切影響を与えません。 ところで5月20日以降、国際キログラム原器はどうなるのでしょうか。 計画では、現在の場所、国際度量衡局（BIPM）に保管され続けることになっています。 この質量の安定性は、引き続き測定される予定です。
