高速で安全なラム酒のタンク充填

酒類や蒸留酒類をタンクで貯蔵し熟成する場合、その過程でアルコール成分が失われることがあります。しかし、あるスペインの蒸留酒メーカーでは、手作業で行われていたプロセスを自動計量・充填システムに置き換えることで、生産性 と トレーサビリティを向上することができるようになりました。

Mobile Dimensioning
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スペインの蒸留酒メーカー、Bardinet, S.A.社では1857年からアルコール飲料の製造を行っています。代表的ブランドのNegritaは、伝統的なラム酒の世界的なシンボルとして広く知れ渡りました。この企業では創業以来、カリブ海のさまざまな地域から採取されるラム酒の独創的な混合法、熟成法、調製法を重視してきました。

手作業によるプロセス制御の限界
創業以来、この企業では手作業によるプロセスでラム酒の有効なアルコール含有量を観察し、在庫をモニタリングしてきました。このトラック&トレース作業は、ラム酒の製造管理および品質管理機能として大きな役割を果たしています。税関局では酒類の輸出に関して、熟成の過程で失われるアルコール含有量(1年につき3%が限度)を文書化し証明することが義務づけられています。

旧来のシステムでは、プロセスの文書化のために複数のタンクにおいて全バッチを排出する必要がありました。タンクを再充填するには数週間かかるため、内容物の蒸発や品質の低下を招きます。新しいシステムではこの課題を解決し、製造プロセスを高速化しました。

完全なバッチのトレーサビリティ
メトラー・トレドはエンジニアリング企業のe21 DESING TECHNOLOGIES S.L.社と協働で、Bardinet社のニーズに応える注文設計ソリューションを開発しました。この新しいシステムには異なる2つのステーションが設計され、タンクの充填や排出を行う自動計量システムを内蔵しています。電動式ローラーコンベヤをスケールと連動させて、タンクの充填や排出も行います。また、2つの増設ローラーコンベヤでタンクパレットの積み下ろしも行います。IND560x計量指示計に内蔵されているTask Expertソフトウェアでは、タンクを6本積載したパレットのチェックを行います。

さらに、各計量ステーションにはバーコードリーダーが搭載されています。荷下ろしを行うステーションでは、各パレットに積載されている6本のタンクで排出作業が完了するとバッチが終了します。各パレットは固有のバーコードで認識されます。バーコードリーダーにより、各バッチが実行された日付時刻を含む各パレット固有の計量データが保存され、トレーサビリティを保証します。アルコール飲料を取り扱う場合、危険場所(ATEX zone)での設置に対応している機器が適切です。

このソリューションは、電動式ローラーコンベヤのMultiMount™計量モジュールに接続された2台のIND560x指示計で構成されます。各計量指示計はイーサネット TCP/IPを介してコンピュータ制御システムへ接続され、リアルタイムのデータ収集を行います。 指示計は、製品の積載や排出の際にタンク位置を管理するPLCと同時通信を行います。

向上したプロセス制御
プロセスの自動化により、この企業では製造プロセスで失われていたアルコールを管理することに成功しました。製品の減少は、今ではコンピュータプログラムで容易にモニタリングできるようになりました。 ラム酒のタンクを排出してから再充填するまでの時間を大幅に短縮し、品質も向上しました。