滴定サンプルの調製に最適な天びんはどれですか。
あらゆる天びんで行うどの測定にも不確かさが含まれています。この不確かさを理解することが、正確な計量結果を得て、下流工程でエラーの発生を防ぐカギとなります。
計量機器の正確さの決め手になるのは、最小表示値ではなく繰返し性です。計量機器の最小計量値も重要な要素です。
ニーズに合う適切な天びんを見つけるには、計量する最小量とその計量に必要な正確さ(許容誤差の程度など)を理解している必要があります。
メトラー・トレドのグローバルな計量スタンダード、GWP®により、アプリケーション要件に適合する適切な天びんを選ぶことができます。推奨される天びんの無料のご相談については、最寄りの担当窓口までお問い合わせください。
液体サンプルの滴定結果の正確さはどのように改善できますか。
正確な滴定サンプルを得るには、正しい天びんを使用する必要があります。(質問1を参照)ただし、サンプル調製で最高レベルの正確さを達成できるように、固体サンプルのように液体サンプルでも重量を使用することをお勧めします。密度を使用して重量値を容量値に変換する方が、フラスコなどの目盛りから容積を読み取るよりも正確です。
微粉末の計量で静電気の問題があります。解決方法はありますか。
帯電は、主に容器や素材の取り扱いや搬送の際に攪拌や摩擦によって起こります。相対湿度が40%以下の場合、帯電のリスクが高まります。静電気を帯電したサンプルや容器は天びんの計量セルに見えない応力を印加し、誤った計量結果の原因になります。天びんが安定するまで時間がかかる場合は、静電気が原因かもしれません。このような問題を避けるため、以下を推奨します。
- 相対湿度を45~60%まで高めます。
- 計量容器を金属容器に入れて、静電気を打ち消します。
- すぐに帯電するプラスチックやガラス製の容器を使わないようにします。代わりに金属製を使用します。
- イオナイザーにサンプルと容器を通し、計量結果に影響する帯電のリスクを取り除きます。メトラー・トレドは、各種のイオナイザーキットを提供しています。
メトラー・トレドのExcellence分析天びんには独自のStaticDetect™技術が組み込まれており、事前に指定した限界値を超える帯電が検出されると警告します。
天びんを使用してどのように容積を測定できますか。
溶液(液体サンプル、滴定液など)の調製に使用する液体の容積測定によって、滴定プロセスに誤差が生じる場合があります。容積測定ガラス器具には誤差もともないます。ただし、これらは慎重な校正により調整できます。また、容量を示す目盛りを主観的に読み取る際にも視差がともないます。液体を計量して密度で調整することで、容積の計算は大幅に正確になります。
容積 = 質量/密度
ASTM D664に従って石油化学製品の全酸価(TAN)を求めます。1.0から100を超える範囲のTANが想定される種類多様なサンプルがあります。これらすべてのサンプルに対応するには、どの天びんを使えばよいですか。
ASTM D664では、最小のTAN値(0.05~1.0未満)の場合、サンプルサイズは20g +/- 2.0gを使用し0.10gの計量の正確さが求められています。最大のTAN値(100~260未満)の場合、サンプルサイズは0.1g +/- 0.01gを使用し0.0005gの計量の正確さが求められています。
これらの要件に対応できるように、XPE204またはXPE205分析天びんをお勧めします。ニーズに合う正しい天びんを選定するには、メトラー・トレドのグローバルな計量スタンダード、GWP®が、アプリケーションと品質の要件を満たす適切な天びんの選定に役立ちます。このサービスは無料です。
全塩基価の測定により潤滑剤の劣化を分析する際に、ASTM D4739による試験手順に準拠したい考えです。どのような最適なサンプル質量を使用すればよいですか。
ASTM D4739に従い、サンプルの概算質量は想定される塩基価に基づいて次のように計算できます: 「サンプルの概算質量(g)は7を想定される塩基価で割ったもの」。
滴定サンプルの計量をどのようにより効率的にできますか。
メトラー・トレドのExcellence天びんには滴定用アプリケーションが内蔵されており、計量プロセスの簡素化とスピードアップに役立ちます。このアプリケーションはRFIDリーダー(オプション)と連動し、RFIDタグでデータを読み書きします。タグは滴定ビーカーの底面に付けられ、サンプルデータを指定のメトラー・トレド滴定装置に自動で安全に転送します。
天びんをメトラー・トレドのLabXラボ用ソフトウェアに接続することで、ユーザー向けの手順に沿った完全なSOPガイダンス、カスタマイズ可能なプロセス、全データを集中データベースに安全に保存する機能などのメリットを得られます。
データ処理はどのように簡素化できますか。
多くの場合、計量値は手書きで記録するか表計算などのソフトウェアにキーボードで入力します。すべての計量値は後から計算に使用するので、正しく記録することが重要です。しかし、手書きのデータ転記には時間がかりミスの要因にもなります。計量値の僅かなエラーが下流の作業では拡大され、高コストで時間のかかる手直しにつながります。データ処理は次のように簡素化できます。
- サンプルIDをバーコードリーダーで読み取ります。
- メトラー・トレドのExcellence分析天びんでは、標準化された出力プロトコルを利用して、計量データを迅速にミスなく外部ソフトウェアにエクスポートできるので、手作業での情報の記録は不要です。これは特に複数のサンプルを計量する場合に便利です。
最高レベルのデータセキュリティと容易なデータ管理が必要な場合は、LabXラボ用ソフトウェアをお勧めします。LabXを使用して、すべての測定結果、天びん情報、ユーザー詳細情報を記録し、研究室にある天びんすべての計量プロセスを制御できます。LabXでは21 CFR part 11へのコンプライアンスに対応できます。

滴定は幅広く使われている分析技法です。製薬、化学薬品、石油化学製品、食品や飲料などの業界で製品の分析や品質管理に使用できます。複数のパラメータ、例えば酸度、アルカリ度、金属イオン、薬品有効成分などを測定できます。水分含有量の測定には、カールフィッシャー滴定という特別な滴定を使用します。
滴定は、サンプルに含まれる特定の物質(被検物質)量の測定です。このとき、既知の濃度の試薬(滴定液)を制御しながら添加し、物質と試薬との完全な化学反応に基づいて測定します。滴定液は反応が完了するまで添加します(当量点)。
滴定の反応をモニタリングする古典的な方法では、適切な指示薬を被検物質に添加します。化学反応が完了すると(滴定終点)被検物質の色が変わります。現在では、化学反応と終点 はセンサによりモニタリングします。
正確な計量が欠かせない理由
滴定液の消費量と濃度、さらに測定に使用するサンプルの重量から、 被検物質の含有量が計算されます。滴定溶液と被検物質のサンプル溶液の両方の調製に使用する物質を正確に計量することが非常に重要になります。正確なサンプル調製がなければ、正確な滴定結果を得ることが難しくなります。

滴定サンプル調製のワークフロー – 一般的なSOPによる概要
滴定を実施する古典的な方法では、ガラスメスシリンダー(ビュレット)から滴定液を被検物質入りのビーカーに手でタップしながら分注します。この技法が開発された当初は、終点到達時に著しい色の変化を示す滴定だけが行われていました。現在では、指示染料を被検物質に添加します。精度は主に化学者のスキル、特に色の違いを見分ける能力に依存します。滴定は急速に発展してきました。手動滴定から始まり、最近ではモーター駆動のピストンビュレットによって正確さと繰返し性を保ちながら滴定液を添加できます。変色指示薬の代わりに電気化学センサが使われるようになり、これにより、結果の正確さと精度がさらに向上しました。 マイクロプロセッサを使用して、滴定の自動での管理と評価が実現しています。専用の滴定装置を使用した自動化によって、滴定のプロセス全体が大幅に簡単になりました。
以下のメソッドは、滴定サンプルの調製と滴定装置で滴定を実施するプロセスを表しています。
一般的な滴定では、滴定液と被検物質を液体(溶液)にする必要があります。通常、固体サンプルは水に融解しますが、石油化学など特殊なアプリケーションでは氷酢酸またはエタノールなど他の溶媒を使用する場合もあります。
溶解固形物の定量分析の一般的なワークフローについて詳しくはここをクリック
滴定の準備では、滴定液の濃度と固体被検物質の重量を正確に測定する必要があります。すべての情報と測定値は慎重に記録し、特に複数サンプルの滴定で、サンプル同士の混同や誤った計算を避けることが重要です。
サンプル調製
- 滴定ビーカーを天びんに載せて風袋引きを行います。
- 検査対象の物質をビーカーに入れて計量します。
- 必要量の溶媒(50mlなど)を添加します。
滴定
- 被検物質を入れたビーカーを滴定装置に移します。
- 滴定装置での自動プロセスにより、被検物質に滴定液を添加します。
- 測定される溶液の電位の変化をセンサがモニタリングし、終点に達した時点で滴定が停止します。
- 滴定装置は被検物質の濃度を自動で計算します。
滴定のサンプル調製ノウハウ
以下の表には、個別のサンプルの特性に応じて滴定サンプルの調製に最適な技術が示されています。
滴定サンプルの調製は、米国薬局方(USP)、国際標準化機構(ISO)、米国材料試験協会(ASTM)などによる多くの標準的な滴定試験方法で重要な要素になります。大半の標準では、必要な計量の正確さのレベルが規定されています。
例えば、ASTM D664 Standard Test Method for Acid Number (AN) of Petroleum Productsには、推奨されるサンプル重量と必要な計量の正確さが含まれています。
基数、臭素価など各種パラメータの測定方法として滴定を使用する、さらに多くのASTMメソッドがあります。これらのメソッドでは、サンプルサイズが標準の重要な要素として規定されています。例えば、ASTM D974、D2896、D1159などがあります。

サポートが必要ですか
正確なサンプル調製によって正確な滴定結果が保証されます。弊社までお気軽にお問い合わせください。計量の専門スタッフがご相談に応じます。
滴定の正確なサンプル調製の課題
サンプルとデータの処理
滴定は、研究室での一般的な技法として比較的簡単に実施できます。一方で、同じ被検物質や異なる被検物質による複数のサンプルを扱う場合は、サンプルとデータの処理が難しくなります。サンプルにラベルを貼付し、すべての測定を正しいサンプルに対して正しく記録することが非常に重要になります。
特に以下の点に注意が必要です。
- 手動のデータ記録プロセスで生じる転記ミスの固有リスク。
- 正確に読みやすくラベルを貼付し、天びんから滴定装置にサンプルを移す際にサンプルの混同を避ける。
- 天びんから滴定装置への計量結果の正しい入力。
正確さと時間
正確な滴定結果を得られるかどうかは、滴定サンプルの正確な調製に大きく依存します。正確なサンプルサイズと関連する計量の正確さを規定しているいくつかの標準では、滴定アプリケーションのニーズに適合した天びんを使用することが非常に重要です。
少量のサンプルでは、天びんの最小計量値を考慮する必要があります。これを下回るサンプルの計量では、必要な正確さのレベルを確保しているという信頼性を得られません。毎日多数のサンプルを検査する多忙な研究室では、短時間で安定する堅牢な天びんによって、オペレーターはディスプレイ上の数字が安定するのを待ち続けることなく、業務を順次進めることができます。サンプルデータ、計量値、滴定結果を手書きで転記する場合は、時間がかかりミスが起こりやすくなります。
清掃
滴定装置と計量機器を隅々まできれいに保つことは、クロスコンタミネーションを防ぐために重要です。汚れたサンプルまたは粘りがあるサンプルでは、計量と清掃に手間がかかります。

メトラー・トレドの滴定サンプル調製用ソリューション
Excellence Level分析天びんは、正確なサンプル調製に最適な滴定のパートナーです。メトラー・トレドのSmartSample™ RFIDシステムと併用することで、サンプルデータと計量値を天びんから滴定装置に自動で転送できます。滴定プロセスを大幅に簡素化し、手作業での転記やデータ入力で起こりやすいミスを解消できます。
- 滴定ビーカーにRFID SmartTag™を直接貼付するかまたはタグをSmartSampleスリーブに付けるだけです(スリーブはメトラー・トレドの100mLポリプロプレンまたはガラス製ビーカーに簡単に着脱できます)。
- SmartSample計量機器を設置したメトラー・トレドのExcellence分析天びんに滴定ビーカーを置きます。
- サンプルID、補正係数や密度などサンプル固有の変数を、天びんに手動で入力するかバーコードリーダーで読み込むことができます。
- サンプルを滴定ビーカーに入れて計量します。計量値や関連するサンプル情報がRFIDタグに自動で転送されます。
- SmartSampleシステムでビーカーがメトラー・トレドの滴定装置に移されると、重量とサンプル情報が滴定装置に自動で転送されます。
- その他の情報の入力なしに、滴定をすぐに開始できます。
- 結果が滴定装置のディスプレイに表示されます。結果をタグに保存してPCに簡単にミスなく転送できます。
主な利点
- 安全で効率的なデータ転送
- 転記ミスの解消
- 時間の節約
- サンプル混同の不安の解消
ビデオ: 滴定とSmartSample RFIDソリューションの実演
メトラー・トレドのサンプル調製用の革新的なソリューションが、どのように滴定プロセス全体を簡素化しエラーなくデータ転送できるかをご覧ください。

無料の参考資料: 計量データの管理 - 紙からデジタルへ
日々の生活の中で記録するデータの大部分は、手作業でペンと紙を使うか、またはスマートフォンやノートPCでメモ用アプリケーションを使用して記録します。ところで、電話番号を書き留めて、後から番号に電話するまでそのメモの間違いに気づかなかったことはあるでしょうか。
ラボでは、このようなよくある人為的エラーが分析全体の結果に影響する原因になります。
研究室での測定結果の正確さとデータ管理を向上する方法について、当社の参考資料を
お読みください。
安全な計量と滴定プロセスのためのソフトウェアソリューション
メトラー・トレドのExcellence分析天びんをLabXラボ用ソフトウェアに接続し、最高レベルの自動データ処理とプロセスセキュリティを得ることができます。天びんのタッチスクリーンから滴定アプリケーションが直接起動し、画面上の指示に従うだけで操作できます。LabXではすべてのデータと計算が自動で処理され、すべての情報が集中的なデータベースに安全に保存されます。
基本計量
LabXに接続したExcellence天びんは、計量を必要とする滴定タスクの専用入力ポイントとなります。タスクを選択するだけで、LabXには手順に沿った天びん操作の指示が表示されサンプル計量プロセスをガイドします。生産性を高めるため、別のサンプルの計量中に滴定を開始することもできます。
柔軟な操作性
機器またはPCから分析を開始し、現在のサンプル分析と最新の結果に常にアクセスできます。居場所を問わず、LabXのメール機能によりメッセージや結果を受信できます。
SmartCodes™
正しいメソッドの選定とバーコードまたはSmartSample™ RFIDによるサンプルIDの転記を完全に自動化できます。これにより、サンプルの検査ごとに情報を読み取ることでサンプル順序の誤りをなくし、製品ごとに正しいメソッドの選定を確認できます。
法規制コンプライアンス
LabXサーバーの規制オプションには、FDAのデータ管理と保存の規制(21 CFR Part 11)に適合するために必要なあらゆるツールが含まれています。機器またはPCで実際に行われた操作がすべてLabXの監査証跡に記録され、作業場所を問わず完全なトレーサビリティを維持し記録を柔軟に利用できます。